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わが家は開会式のあった千駄ヶ谷の国立競技場から、さほど遠くないところでした。 すると、まさしく五輪の輸を描き終えたら機の戦闘機が、わが家の方向に向かって飛んでくるところでした。
このときの情景は、今でも験に焼きついています。 ただひたすら、カツコイイという憧れ。
それは強烈に私の心に残りました。 外国へ行く夢と飛行機への憧れは、私の将来を決定づけました。
パイロットになれば、飛行機も操縦できるし世界中を旅して回ることができる。 パイロットになりたい。
いや、絶対になるんだと、幼心に決意したのです。 パイロットになるまで航空会祉に就職子供の頃の憧れを抱き続け、大学を卒業した私は晴れて航空会社に就職しました。
もちろんパイロットになるためです。 しかし、航空会社に入ったからといってすぐにパイロットになれるわけではありません。
パイロットになるには、航空大学校を経由する場合と、直接、航空会社に入社する場合とがあります(注4)。 直接、航空会社に入社した場合には、約5年間は事業用操縦士や計器飛行証明、陸上多発、航空無線通信士といった国家資格を得るために訓練をします。
さらに航空工学や気象、航法、エンジン理論などの座学や実際の飛行訓練などに必要な知識や経験を積んでいきます。 この期間は「訓練生」と呼ばれ、どの新入社員もパイロットになるために必死です。

。 一人のキャプテンを育てるのには莫大な費用がかかる飛行機を飛ばすのには、大変なお金がかかります。
軽飛行機でさえ1時間数万円、実際のジャンボジェット機では1時間に100万円から150万円の燃料代がかかり、加えて数十万円の着陸料、タイヤの費用、整備代など、直接的にかかる経費だけでも莫大です。 本来なら、お客様を運んで収入をもたらしてくれるはずのジャンボジェット機です。
これを訓練で使うとなれば、1円の収入も生み出さないばかりか、むしろ莫大な経費がかかるというわけです。 比較的安いとされるシミュレーターですら、1時間動かすと電気代やら整備費などで叩万円以上かかります。
さらには、教官の人件費、機体やシミュレーターの減価償却などを考えると、とんでもない金額になります。 昔は一人のキャプテンを育てるのに2億円から3億円がかかると言われたものでした。
厳しく制限された訓練時間これだけお金がかかるのですから、どの訓練も好きなだけやればいいというわけではなく、時間が厳しく制限されています。 また、一定期間内の訓練を経たものの、事前のチェックで審査を受けられるだけの技量になっていなければ、「ノットレディ」という判断を下されます。
航空会社に入った訓練生は、パイロットとしての免許を何も持っていません。 そこで、パイロットになるために必要な「自家用操縦士」、「事業用操縦士」といった資格を取ります。
この資格を取るためには、さまざまな試験科目が定められています。 これらの科目の訓練を大型機で行なうと、あまりに膨大な経費がかかります(小型機なら1時間5万円程度、ジャンボ機なら150万円)。
また、最初から大型旅客機では難しすぎるので、まずエンジンが一つの小型機で訓練を始めます。 何回かの試験を経て、ある程度技量が上がったところで、「陸上多発限定」(注5)という試験を受けます。

このため、エンジンが二つある小型機で訓練します。 小型機の場合にも、訓練時聞が決められています。
たとえば、事業用操縦士の免許を取る訓練は基本の時聞が約160時間、途中でうまく行かない場合の追加の時聞が加数時間といった具合です。 パイロットの訓練の大まかな流れは以上のとおりですが、実際はこの間がいくつもの細かい段階に分かれ、何回もの試験があります。
その一つひとつの段階に基本の訓練時間と最大限の追加時聞が決められています。 訓練時間の制限には、経費がかかるという理由のほかに、もう一つの意味があります。
それは、「操縦の適性を見極める」ということです。 大型機は慣性が大きいため操縦の感覚をつかみにくいのですが、小型機はちょっと方向がずれてもすぐに修正でき、ジャンボジェット機よりもはるかに操縦が簡単です。
この小型機による訓練の段階で、制限時間内に一定レベルで操縦できないと、次の大型旅客機の訓練でついていけない可能性が大きくなります。 大型旅客機の訓練まで進んでからパイロットに向いていないということになれば、会社も莫大な費用と時間を無駄に投資することになります。
それと同時に、若い人の貴重な人生を数年間も奪ってしまうことになります。 したがって、小型機の訓練時間は、パイロットの資質があるかどうかのリトマス試験紙になるというわけです。
夢をあきらめないマイナスからのスタートパイロットにはさまざまな能力が求められます。 身体的能力もその例外ではなく、運動神経がよければそれに越したことはありません。
運動オンチだった私は、訓練生として人よりも出遅れた状態にいました。 いわばパイロットを目指すには、マイナスからのスタートだったのです。

先に述べたように、個別の訓練時間は制限されています。 「自分は着陸が苦手なので、居残りで練習させてください」などということは通用しないのです。
できないものは去るのみ、です。 同期の訓練生が訓練をこなし、めきめきと上達していく中で、私はというと、どの訓練もついていくのがせいいっぱいでした。
飛行機は着陸の直前に頭(機首)を下げて降下率を小さくしてフワッと降りるのですが、最初はこの頭を下げる高さがわからず、ドシンと着いたり、高いところで頭を上げすぎてフラフラになって降りたりと、まったくうまくいきませんでした。 「やっぱり、パイロットになるなんて無理なのか・・・」と思い悩んでいましたが、子供の頃からの夢をあっさり捨てることはできません。
そこで、「他人ができることは、自分にもできるのだ」と自分自身に言い聞かせました。 そして、結局は不足している能力を何とかして補うしかないという結論に達したのです。
到達点は決めました。 問題は、何をどう努力するかです。
到達点を決めたら、現状を把握せよ飛行機の操縦というのは、操縦そのものと、その操縦を支える基本的な能力とに分かれます。 操縦自体は実際の飛行機やシミュレーターを使って学ぶのが王道ですが、ほかの基本的な能力は飛行機で飛んでいなくても培うことができます。

そこで、私は必要な基本的能力を要素ごとに一つひとつ分解してみることにしました。 その要素一つひとつを順番に身につけていけば、最終的に到達点にたどり着けるはずだと考えたのです。
次章で詳述しますが、パイロットを目指して瞬間的にものを見る訓練や周辺視野を鍛えるための訓練などは、日常生活の中でマメにトライしていました。 今から思うと、よくまあこんなにいろいろなことを思いついたものだと自分でも呆れるほどですが、何しろパイロットになるためには落第は許きれないから、必死です。
何かいい方法はないか、どうやったらうまくいくのか。 そんなことばかり考えていました。
ぐんぐんできるようになると、努力するのが楽しい!当時の私はきっと他人の何倍もの努力をしていました。 努力というと、根性とか、地味でつらいものとか、何かしらストイックなイメージを持つ人もいるのではないでしょうか。

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